若返りの秘薬 紅花
「 まゆはきを俤(おもかげ)にして紅粉(べに)の花 」
この句は、松尾芭蕉が奥の細道の旅の途中、山形を訪れた時に詠んだものです。
1689年の当時、紅花なくしては山形を語れなかったのでしょう。
原産はエチオピアともいわれ、エジプトからシルクロードをたどって日本に伝来したといわれています。
江戸時代初期には、山形県が質・量とも日本一の紅花産地として栄えました。
紅の原料となる花の収穫は、朝露が葉に残りトゲがまだやわらかい早朝のうちにひとつひとつ丁寧に手摘みされます。
これらを水にさらしてよく揉むと、鮮やかな黄が染み出します。
最上川沿いの肥えた土地が主産地で、朝露の立ちやすい気候がトゲのある紅花を摘みやすくしたといいます。
7月上旬頃、最上紅の畑で最初の花が開くと、黄色のさざ波が起きたかのごとく、畑全体に開花が広がっていきます。
アーユルヴェーダでも古くからKUNKUMAの名で、眼疾患、肝疾患、排尿困難、月経困難などの治療薬とされてきました。
活性酸素から体を守る効果が高く、血管や肌・細胞などの老化予防、血行促進など、若返りの秘薬として珍重されてきた、漢方では欠かせない生薬です。
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紅、は日本の美とされてきた色のひとつです。
おしろいを肌に乗せ、黒髪を結い、口紅を塗る。
紅花をまゆはきになぞらえた芭蕉の句から、日本古来の女性の美しさも覗えます。
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